”夜と霧”   V.E.フランクル 

第二次大戦下、ナチスによって強制収容所に送られ、奇跡的に生き残ったV.E.フランクルが書き残した、「夜と霧」。

霜山徳爾訳「夜と霧」は、戦後最大のベストセラーですが、
若い頃の私には、本に載っていた写真などがあまりにも残酷で、
重い気持ちにさせられ、ついに読む気がしなかった本でした。

しかし、霜山徳爾訳「夜と霧」を出版したみすず書房が高校生に読んでもらいたいとの思いから、
池田香代子さんが訳して2002年に第2版が出版されました。

池田香代子訳は、大変に読みやすく、単にナチスの犯罪を告発するだけでなく、
人間としての生きる意味を問うフランクルの思いが、読者に深い思念を呼び起こす内容でした。
高校生向けという事ですが、全ての世代にとって読み応えのある本です。

フランクルの別の著書「それでも人生にイエスと言う
(春秋社  山田邦夫/松田美佳 訳)に以下の文章が書かれていました。
(この本書のもとになった講演は1946年に行われました。ナチス強制収容所から解放された翌年の講演です。)


「・・・・・・たしかに、過去の年月によって、私達は冷静になりました。
が、その年月を経て、人間性が問題であることもはっきりしたのです。

すべては、その人がどういう人間であるかにかかっていることを、私たちは学んだのです。
最後の最後まで大切だったのは、その人がどんな人間であるか「だけ」だったのです。

なんといっても、そうです!
ついこのあいだ起こったどんなにおぞましい出来事の中でも、そして、強制収容所の体験の中でも、
その人がどんな人間であるかがやはり問題でありつづけたのです。」

「最後の最後まで問題でありつづけたのは、人間でした。「裸の」人間でした。」

「人間はありのままの実存に連れ戻されたのですが、この「実存」とは、まさしく決断に他ならないからです。」

ナチス強制収容所における想像を絶する阿鼻叫喚の地獄を生きた彼は、この地上には二つの人間のタイプ、
つまり品位のある人間とそうでない人間が存在し、あらゆるグループに入り込み混在しているのだということを述べています。

品位は神様からくる”と、聞いたことがあります。
心に残る言葉でした。