【コラム】韓国社会にごまんといる「セウォル号の船長」

【コラム】韓国社会にごまんといる「セウォル号の船長」より抜粋


ニューヨークのタクシーは運転が乱暴なことで有名だ。
スピードを出し過ぎ、料金をごまかすこともある。
だがバスは違う。
客が乗り込むと、座席に座るまで待っている。
体の不自由な客がいる場合には、発車まで十数分かかることすらある。
運転手が降りて車椅子を持ち上げ、車内に固定して、安全を確認して発車するのだ。

東京のバスも同じだ。車線を変更せず、スピードを出すことも、急ブレーキをかけることもない。
そのため、歩いた方が早いといわれるほどスピードは遅い。だが気は楽だ。


バスに乗った途端、急発進して転倒するのではないかという不安、
座席に座っているとバスが停留所を通過し、降りられなくなるのではないかという不安もないからだ。

 ・・・略・・・


世界銀行が韓国を「開発途上国」リストから除外したのは1997年のことだ。
1人当たり国民所得が1万ドル(現在のレートで約100万円)を超え、
「先進国クラブ」と呼ばれる経済協力開発機構OECD)に加盟したことが反映されたのだ。

この年には厳しい経済危機に見舞われたが、
結果的に危機が刺激となり、韓国は先進国に分類されることになった。

そのスピードはあまりにも速かった。
未熟な人々は「成功神話」によってつらい過去を忘れた。



崩落事故で数十人が犠牲になった聖水大橋や、倒壊事故で数百人の犠牲者を出した
三豊百貨店の跡地に造られた新たな建造物を見ているうちに、教訓を忘れてしまった。

セウォル号の船長は、20年前の聖水大橋の管理者や、三豊百貨店の経営者と何ら変わらない。



そして今、韓国社会の安全に責任を持つべき地位に、
セウォル号の船長のような人物がいくらでもいる。

下心を持つことなく、
乗客のために命をささげる英雄のような船長を望んでいるのではない。


王も大統領も、国民を見捨てて逃亡した過去があることを知っているだけに、
「船長よ、あなただけは乗客と運命を共にせよ」と強要するのも恥知らずなことだ。
命を捨てろとまでは言わない。


ただ、自ら与えられた地位に責任を持ち、規則を守ってほしいということだ。
船が沈みそうになったら、マニュアル通りに行動し、中にいる子どもたちを避難させてほしいということだ。




国連のコフィー・アナン前事務総長は「先進国」についてこう定義している。
「全ての国民が安全な環境の下、自由で健康な生活を送れる国」。
この点で韓国は依然、途上国のままだ。

鮮于鉦(ソンウ・ジョン)国際部長

朝鮮日報朝鮮日報日本語版
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/04/19/2014041900589.html